教育振興基本計画×実践事例レポート第1弾!鳥取の取組・ふるさとキャリア教育について伺いました!
2023年6月16日に閣議決定された教育振興基本計画では、「持続可能な社会の担い手の育成」と「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」を2つの大きなコンセプトとして掲げています。
今後、国の計画を参考にしながら、各自治体においても教育振興基本計画が策定されることになります。
※「教育振興基本計画」については、以下の記事もあわせてご参照ください!
今回2つのコンセプトとして掲げられた
「持続可能な社会の担い手の育成」
「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」
このように言葉を並べると、何やら全く新しい概念が出てきた💦と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実はこれらは、これまでも学校教育において目指されてきたことなのです。
この地域発!教育振興基本計画×実践事例レポートでは、各地域における計画の内容の具体的な取組の参考になるような情報・事例を発信していきます。
第1弾は、鳥取県!🐦
これからご紹介する鳥取県の“ふるさとキャリア教育”は、まさにこの2つのコンセプトにつながる取組の一つの形と言えると思います。
鳥取県の掲げるビジョンや、先生方の想い、生徒達の様子を詳しくお伝えしながら、教育振興基本計画が目指す方向を皆さんと共有できたらと思います。
鳥取県が進める“ふるさとキャリア教育”
鳥取県西部に位置する米子市。中国地方最高峰の大山と雄大な日本海に囲まれた、自然豊かな場所です。
鳥取県では、教育を通して地域の魅力を学ぶふるさと教育と、自らの生き方・あり方について考えるキャリア教育の充実を合わせて「ふるさとキャリア教育」としています。
“ふるさとキャリア教育”を充実することで、鳥取県に誇りと愛着を持ち、子供たちが自立し、自分らしい生き方を実現するとともに、将来にわたりふるさと鳥取を思い、様々な場面でふるさと鳥取を支えていくことができる人材の育成を目指しているとのことでした。
市町村や各学校において円滑に取組が進められるよう、県としては、教職員に対する研修会を実施したり、学校においてふるさとキャリア教育を推進する好事例を動画にまとめ、情報発信したりするなどのサポートを行っています。
今回は、米子市立後藤ヶ丘中学校に訪問して、取組の詳細を伺いました。案内してくださったのは、松尾校長先生、安部先生です。
まずは松尾校長先生に学校の全般的な取組について、説明をいただきました。
「わが校では、“生徒が誇りに思える学校”を目指し、生徒が最大限成長できるよう、全教職員で検討した目指す生徒像の実現に向けて、カリキュラムづくりや校内の組織体制づくりを行っています」
次に、総合的な学習の時間主任の安部先生より、後藤ヶ丘中学校の総合的な学習の時間(探究的な学習)の時間の取組について伺いました。
具体的には、以下のようなテーマで取り組んでいました。
1年生:地域の魅力を発信しよう
2年生:なぜ人は働くのか
3年生:中学生主役のまちづくり
(詳細)※後藤ヶ丘中学校の取組を詳しく紹介した動画(とっとり動画ちゃんねる/約16分間)
これらのテーマにはどのようなねらいが込められているのか?地域とはどのような関わり方をされているのか?気になるあれこれについて、安部先生に伺ってみました。
――テーマ設定にはどのようなねらいがあるのでしょうか。
地域の特徴としては、豊富な環境資源・人材資源があることが挙げられます。一方、学校の特徴として、地域・社会への参画意識はあるけれど、地域行事への参加の割合が低かったり、また自ら課題を見つけ、自ら解決の見通しを持つ力がないといった点が挙げられました。学校→地域→社会へと目を向けてほしいと考え、上記テーマ設定にしました。
――生徒達はどのような形で地域と関わるのでしょうか。
フィールドワーク等も可能な形を考え、2コマ続きになるように時間割を組みました。課題決定した後は、実際に体験・見学のためのフィールドワークを行います。実際に皆さんが働いている現場で打合せを行ったり、アンケートや街頭インタビューをしたりしたグループもありました。
――協力いただく企業との連携など、先生方のご負担もあると思うのですが、実際いかがでしたでしょうか?
生徒の意向に沿おうとすると活動が広がりすぎてしまったり、準備や打合せに膨大な時間を割く必要が出てしまいます。校外学習ですので安全にも気を付けないといけません。よい活動を求めつつ、教員の負担のバランスも考えないといけない、このあたりについては今後の課題だと感じています。
――地域との関わりの中で、生徒達はどのような経験を得られたのでしょうか?
訪問や取材を通して、地域の温かみに触れることができました。また、様々な大人や企業・事業所等と出会う中で、生徒たちが様々な価値観に触れることができたと思います。
――見学させていただいた授業でも、国語の時間の中で、敬語の学習を企業訪問の練習とつなげるなど、通常の教科の授業の中でも総合的な学習の時間と関連をもたせて学んでおり、学校での活動全体が、“ふるさとキャリア教育”という軸の中で動いているように感じました。社会の厳しさや難しさ、一方で社会や地域に貢献できる喜びや達成感、そのようなことを中学校段階で体感することは、“社会の創り手”の育成の一つですね。
――生徒達自身の変化はどのような点に見られましたか?
実際に企業の方と深く関わっていくことで、生徒たちがより主体的に分析や提案内容を考えるようになりました。さらに、縦割りの全体発表会とすることで、生徒一人一人に表現する場を確保することができました。また、異学年で評価し合うことで批判的思考を活性化させることができました。
――“自己肯定感” “達成感” “協働性” “社会貢献意識” “学校や地域でのつながり”を子供たちが感じることができたという印象を受けます。これはまさに、教育振興基本計画でも言及している、教育に関連するウェルビーイングの要素そのものかもしれませんね。
――様々なお話をお聞かせくださり、ありがとうございました!
今回は、総合的な学習の時間を使ったふるさとキャリア教育を通じて、生徒自身や保護者、地域や学校が協力して“子供たちの最大限の成長を実現”していこうとする米子市立後藤ヶ丘中学校の取組をご紹介しました。
今後も、教育振興基本計画のコンセプトを体現・実践する取組事例や、各自治体における教育振興基本計画策定の参考になるような事例について、数回に分けて連載としてお届けする予定です!
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