【福島#1】ふるさとと子供たちのウェルビーイングを共に目指す|教育振興基本計画×実践事例⑨
令和5年6月に策定した第4期教育振興基本計画では、「持続可能な社会の担い手の育成」と「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」を2つの大きなコンセプトとして掲げています。
「地域発!教育振興基本計画×実践事例レポート」第9弾の今回は、いち早く県の計画にウェルビーイングを取り入れている、福島県の取組を3回に分けてご紹介します。
福島県の第7次福島県総合教育計画における育成したい人間像
福島県では、令和3年度に決定され、令和4年度から12年度までの計画である第7次福島県総合教育計画において、ウェルビーイングの実現について記載があり、予測困難な社会と福島県の復興・創生を見据えて、「一人一人の多様な幸せと社会全体の幸せを意味する個人と社会のWell-beingを実現することが求められています」としています。
また、この計画では、育成したい人間像・育む力を次のように示しています。
「大人が持つ既存の考え方や価値観が必ずしも正解であるとは限りません。正解が1つとは限らない社会において、子どもたちが個人と社会のWell-beingを実現するためには、自らの力で豊かな人生を切り拓き、多様な他者と共に豊かな社会を創造していくことが必要になります。特に、様々な要素を含む困難な問題を抱える本県であるからこそ、多様な他者との対話や協働を重視していく必要があります。」
これらの人間像の育成に向けて、「6つの施策」と、それに基づく「主な取組」が設定され、具体的な取組が進められています。「6つの施策」のうち、今回の第9弾では、「学びのセーフティネットと個性を伸ばす教育」と「「福島を生きる」教育」の2つの施策で進められている取組において、児童・生徒のウェルビーイングがどう高められているかをご紹介します。
不登校児童生徒への支援充実の取組
福島県では、第7次福島県総合教育計画において、施策3「学びのセーフティネットと個性を伸ばす教育によって多様性を力に変える土壌をつくる」を掲げ、誰一人取り残すことなく、全ての子供たちが、可能性や個性を伸ばすことができるよう、子供たちの状況に応じた教育機会の提供や支援を行い、多様性を力に変える土壌づくりを目指しています。
各学校においては、スペシャルサポートルーム(SSR)登校、別室登校、時間差登校、保健室登校など、様々な選択肢を用意するとともに、福島県教育委員会では、令和5年度に、福島県不登校児童生徒支援センター(通称「roomF」)を設立し、SSRの設置促進や運営支援、教育支援センターが未設置の市町村への学習サポーター派遣や設置促進、東京大学先端科学技術研究センターLEARNとの専任アドバイザー委託事業、及び不登校児童生徒へのオンライン支援等、様々な支援策に取り組んでいます。
roomFは、令和5年度から2市町をモデル地区として、オンライン会議システムによる不登校児童生徒支援を開始しました。令和6年6月にはプラットフォームをメタバースに切り替え、対象地区を7市町村に拡大しています。
福島県は県土が広いため、道路の敷設状況や豪雪の都合などにより、物理的に支援が手薄になってしまいがちなエリアのことなども考え、支援手法の検討が進められてきました。持病を抱えて思うように登校できない、地理的・交通状況の関係で、学校外の支援機関が遠すぎて教育支援センターに通所できないなど、様々な事情がある場合にも、オンラインによる支援は選択肢の一つとして機能しています。
オンライン支援の仕組み
オンライン支援は、仮想オフィスプラットフォームを活用したメタバース内で行われています。さらに、学習ポータルサイトを通じて、企業等が提供する学習サイトや、不登校児童生徒を支援するNPO団体が運営する学習サイト等を利用することができるようにしています。これらの方法によって、子供たちが自学学習で学び直しや、自分のペースでの学習ができるようになっています。
メタバース内では、参加者はアバターを使って自由に移動することができ、アバター同士で交流をしながら、ゲーム感覚で参加できるプログラムや、roomFスタッフによる学習支援などにより、他の児童生徒やスタッフとのコミュニケーションを行ったり、オンラインで学習を継続したりすることができます。また、リアクションボタン機能やチャット機能を使うことで、能動的なコミュニケーションをすることができます。
開始初年度はオンライン会議システムを使っていましたが、児童生徒のリアクションがわかりにくい、参加者同士のコミュニケーションがうまく進まないなどの課題があったため、検討を重ね、今の仕組みになっています。
また、児童生徒に付与しているアカウントによるシングルサインオンの仕組みを採用することで、様々な学習サービスのログインの手間が省けるなど、生徒の利便性を向上させています。同時に、メタバースへの参加状況と学習サイトのログが、同じアカウント名でシステムから取得でき、該当児童生徒の参加状況が把握しやすくなっています。
(メタバース空間のイメージ)
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