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今こそ「留学」応援します!ポイント解説

岸田総理が議長を務める教育未来創造会議において、2033年までに「日本人学生の留学への派遣50万人」「外国人留学生の受入れ40万人」とする目標が掲げられました。特に、日本人の留学者数は、コロナ禍前の2019年で約20万人ですので、その倍以上とする大きな目標となります。

そこで、特に高校生や大学生のみなさまに留学について興味を持ち、挑戦してもらえるよう、世界的な留学生交流のトレンドや政府の今後の支援方針についてご紹介します。



●今、求められるグローバル人材

2019年の「トビタテ!留学JAPAN」の調査によると、企業採用担当者の約65%が留学経験者を今後積極的に採用していきたいと回答しており、その割合は確実に増加しています。また、2019年の日本貿易振興機構(JETRO)の調査によると、グローバル志向の企業は多くあるものの、その際に海外ビジネスを担う人材が不足していることが一番の課題として挙げられています。その他、2022年10月の日本経済団体連合会の提言では、企業が長期の海外留学を通じて、能力や資質等を高めた人材の採用を希望していることが示されており、留学経験者が培った異文化を理解する柔軟な姿勢や、チャレンジ精神、語学力は社会から高く評価され、求められていることがわかります。

●なぜ留学が必要なのか?

それでは、グローバル人材となるために、なぜ留学が必要なのでしょうか。

留学は、異国の地で多様な文化や価値観等を持った者と共に学び、時にはぶつかり合いながらもコミュニケーションを図ることで互いを理解し、課題解決へ向けて協働することで新たな価値が生み出され、その結果、世界にイノベーションが生み出される活動です。この経験を通じて、各個人が視野を広げ、能力を開花させることで、国際社会を舞台に世界と対等に渡り合う、又は、世界に開かれた地域社会を形成するなど、各分野におけるリーダーとなっていくことが期待されます。

●世界は留学時代へ!

実は、世界の留学生数は、2000年には約160万人でしたが、2020年には約3.5倍の約560万人へと急増しています。コロナ禍の影響により、一時的に留学生交流は停滞しましたが、イギリスは2030年までに60万人、フランスは2027年までに50万人の留学生受入れを目指すなど、世界で留学生の獲得競争が激化しており、今後世界の留学生数は引き続き増加することが予想されます。


■ 世界の留学生数と各国シェア(受入れ)
The Power of International Education ”Project Atlas”, Global Mobility Trends(2020)


●世界から見た日本人学生

世界の留学生数が急増する一方、日本の学生の留学者数は人口に比して未だ少ない状況です。特に、アジアの要所にある日本との繋がりを求め、日本人学生と共に学び、自国の大学の教育研究を発展させたいと思う国・大学は多くあり、日本人学生の存在は各国にとって魅力的に映っています。実際に、各国の政府関係者からは、「もっと多くの日本人学生を送り出してほしい」「1か月程度の短期ではなく、中長期間留学へ送り出してほしい」という声が聞こえてきます。

●日本の留学生の現状

日本では、2008年に「留学生30万人計画」を発表し、日本の文化の発信による外国人留学生の呼び込みや、英語で授業を行う大学の整備、卒業後の就職支援など、様々な取組を行い、目標より一年早く、2019年に30万人の目標を達成し、日本の留学生交流は上昇気流に乗りました。

JASSO「外国人留学生在籍状況調査」 (2022)

しかし、その後のコロナによる影響で、日本に来る外国人留学生の数は大きく減りました。さらに、留学に行く日本人学生の数は前年比で約99%減少するなど、大きな打撃を受けました。

JASSO「日本人学生留学状況調査」(2021)

●コロナの影響、オンライン留学の意義

留学生交流が停滞するということは、何を意味するのでしょうか。それは、単に大学のキャンパスに存在する学生の数が減るということではなく、それ以上に、色々な考えや経験を持った学生同士の交流が途絶え、学び合う機会が減ることや、世界の一流大学と一緒に研究をする機会がなくなるなど、日本の大学教育の発展にブレーキをかけるような重大な事態です。

また、この間、オンラインを活用した国際交流や国際共同教育プログラムが大きく展開しました。オンライン等デジタル技術を活用した国際交流は、複数の国を同時につないで共に学ぶなど、高等教育の新たな可能性を拓きました。一方、留学とは、キャンパスの外も含めた学生生活全般において、異国の社会や文化に直接触れながら、多様な他者との協働・交流を通じてグローバル人材としての資質・能力を養うものです。

これからの留学は、実際の留学の前にオンラインで語学研修を行うなど、オンラインと実留学の長所を活かした、最適な組み合わせを追求していくことが大事であると考えています。

●留学生交流の再スタート

コロナ対策のための水際対策が緩和され、ポストコロナ時代に向けたグローバル人材の育成の仕方を議論するため、岸田総理のリーダーシップにより、冒頭の「教育未来創造会議」が開催され、留学生交流の立て直しへ向け、日本の未来の政策の大方針が議論されました。

4月には、議論がまとまり、「未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ(J-MIRAI)」が発表されました。その中で、2033年までに、「日本人学生の海外留学者数50万人」「外国人留学生の受入れ数40万人」を目指すという新たな目標とともに、日本人学生の中長期留学を推進すること、より多くの優秀で多様な留学生を受入れること、留学生交流の基盤となる大学の国際性をより高めるという方向性が示されました。

●これからの留学生を応援します!

みなさまは留学に行きたいと思いますか?そう思った人はもしかしたら日本では少数派かもしれません。日本では、「外国に留学をしたいと思わない」という回答が5割を超えるなど、若者は「内向き志向である」と言われることがあります。また、留学に行った学生でも、その7割は1か月未満の短期留学です。

しかし、本当に若者が内向きなのでしょうか。留学に行かない理由を見てみると、「経済的理由」が一位です。また、留学に行ったきっかけに目を向けると、「身近に留学を経験した人がいた」「海外に行ったことがある」「国内で外国人と接する機会があった」など、「留学」を身近に感じたことが多く挙げられています。

このことから、文部科学省では、若者が「内向き」なのではなく、「留学に行きたい!」「留学に行ける!」と思えるような環境ができていないのではないかと考えました。留学を「自分事」として捉えてもらうことや、大学に通いながら中長期の留学に行きやすい環境を整えること、留学に行くための経済的な支援が必要です。

●高校生のための留学支援

まず、高校生などより早い段階から国際交流を経験することにより、留学への意識を高めることが必要です。文部科学省では、国際交流・留学環境整備のために各都道府県を支援するほか、民間企業等からの寄附により、留学を支援する官民協働の「トビタテ!留学JAPAN」を実施し、高校生が国境を越えた探究活動を通じて得たものを社会に還元できるよう育成し、留学の機運醸成・支援を強化しています。

今年度からの「トビタテ!留学JAPAN」第2ステージにおいては、特に高校生への支援に力を入れており、「新・日本代表プログラム」(第8期)においては、コロナ前の水準に近づく2,238名の応募があり、708名を採用しました。採用された高校生には、奨学金及び留学準備金が支給されます。

また、「アジア高校生架け橋プロジェクト+」等により、アジアやG7諸国の高校生を日本の高等学校に招き、日本の高校生も学び合いを通じて国際交流を深められる取組なども行っています。

より多くの高校生が国際交流を経験することにより、大学に進学してから、よりレベルの高い留学に挑戦するきっかけとなりますが、留年や休学をしないと中長期の留学へ行けないことや、語学力への不安など、大学のバックアップも必要です。

●大学生のための留学支援

学生が留学に行くためには、丁寧な英語教育や、海外大学と連携して単位互換を行う仕組みの構築、留学を支援できる教職員体制があることが重要です。文部科学省では、2014年から、スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)を実施し、国際化に取り組む大学の支援をしています。SGUに選ばれた大学では、外国語による授業科目の増加や留学生交流数の増加や、日本人学生や教職員の英語の能力の向上が見られました。

一方、日本人学生と外国人留学生が共に学ぶ環境ができていないなど、まだまだ課題は山積です。日本の大学が世界トップレベルの大学と遜色ない教育研究環境を整える仕組みづくりが今後求められています。

学生がいざ留学に行こうとしたとき、経済的理由で留学を断念することがあってはいけません。文部科学省では、留学を応援するための奨学金を提供しているほか、前述の「トビタテ!留学JAPAN」の取組で、民間企業からの寄附を財源とした経済的な支援を大学生等にも行っています。

これまでの成果等を踏まえ、2023年度からは「トビタテ!留学JAPAN」第2ステージが始まっています。大学生等を対象としたプログラムにおける第1ステージとの大きな違いは、①これまでの日本代表プログラムを、より社会にインパクトを与える人材を育成するプログラムへと刷新したこと、②意欲ある大学1年生の留学を応援すべく、第1ステージでは支援していなかった大学1年生を新たに支援対象としたこと、の2点が挙げられます。

第2ステージ初となる大学生等を対象とした「新・日本代表プログラム」(第15期)については、前回(第14期は1,014人)を上回る1,356名の応募があり、261名を採用しました。引き続き、意欲と能力のある若者の海外留学の促進に努めてまいります。

具体的な支援メニューは以下をご覧ください。

文部科学省では、希望する誰もが国際交流を行い、より多くの学生がその可能性を広げられるよう、強力に留学生交流拡大へ向けた取組を推進していきます。

▽より詳細な留学情報はこちら


【レポート】G7富山・金沢教育大臣会合 ~コロナの影響を踏まえた今後の教育のあり方について~

2023年は日本がG7の議長国の年であり、5月19~21日にG7広島サミット(主要国首脳会議)が開催されましたが、この首脳会議の関係閣僚会合の一つとして、5月12~15日に、富山県(富山市)と石川県(金沢市)において、G7富山・金沢教育大臣会合が開催され、「コロナの影響を踏まえた今後の教育のあり方」を全体テーマとして、G7各国、EU、ユネスコ、OECDの代表者による議論が行われました。

その成果文書として採択された「富山・金沢宣言」の中では、基本的な考え方として「教育は民主主義や自由、法の支配や平和の礎である」との価値観を改めて共有するとともに、

①コロナ禍を経た学校の役割の発揮とICT環境整備
②全ての子供たちの可能性を引き出す教育の実現
③社会課題の解決とイノベーションを結び付けて成長を生み出す人材の育成
④国際社会の連携に向け、新たな価値を創造するための国際教育交流の推進

の4つの方向性について合意しました。この他、G7間で、継続的なハイレベル政策対話の実現に向けて取り組むことに合意しました。
本宣言の内容は、G7広島首脳コミュニケにも取り入れられました。

大臣セッション記念撮影。

文部科学省としては、引き続き、本宣言や首脳コミュニケも踏まえて、施策の推進に努めてまいります。

会合の詳細については、ホームページnoteに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。

富山市立八尾中学校。ドイツの州大臣と子供たちが自撮り。
富山市立芝園小学校。子供たちが各国代表と一緒に給食を食べました。
金沢の高校生の合唱披露後、フランスの大臣と記念撮影。
金沢大学で永岡大臣が学生たちと議論。


開催概要、結果等(文部科学省ホームページ)

詳細レポート(note)


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「ミラメク」2023年夏号 記事

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