見出し画像

子供の意見ってどう聴くの?どう反映するの?こども家庭庁がガイドラインを作成しました[地域発!教育振興基本計画×実践事例レポート⑦]

第4期教育振興基本計画で新たに記載された項目の一つ、「各ステークホルダー(子供を含む)からの意見聴取・対話」

これについては、どのように行えばよいのか悩んでおられる自治体も多く、これまで文部科学省「ミラメク」noteにおいても様々な自治体の取組を紹介してきたところです。

そのような中、先日こども家庭庁で、こども・若者の意見の政策反映に向けたガイドラインが作成されました。今回はこのガイドライン策定の背景や経緯、自治体や他省庁の担当者の皆さんにお伝えしたいことを、こども家庭庁の担当者に伺いました。

こども・若者の意見の政策反映に向けたガイドライン<概要版(取組ポイント)>(PDF)

===

――このガイドラインを作成するにあたり、会議での議論や調査研究、パブリックコメントなどかなりの時間が費やされたように思います。まずは作成に至る経緯や背景をお聞かせいただけますか。

“昨年4月に施行されたこども基本法の第11条においては、こども施策に対するこども等の意見の反映についての規定があります。

(こども施策に対するこども等の意見の反映)
第十一条 国及び地方公共団体は、こども施策を策定し、実施し、及び評価するに当たっては、当該こども施策の対象となるこども又はこどもを養育する者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

こども基本法 | e-Gov法令検索

しかし、国においても自治体においても先進事例は多くなく、行政職員は、どう聴いたらいいの?何について聴くの?誰に聴くの?どう反映するの?といった状況でした。

そこで、こども・若者の意見を聴き、政策に反映することについての理解を深めるとともに、実践の留意点や工夫、事例の提供するためのガイドラインが必要だということになりました。

それに先立って、令和4年度、5年度に意見反映の在り方についての調査研究を実施するとともに、国や自治体の取組状況や事例についてのアンケートを行ったほか、若者や現場の自治体の方にも入っていただいた有識者会議やこども・若者参画及び意見反映専門委員会において議論しました。それらの結果も踏まえて完成したのが本ガイドラインです。”

令和4年度内閣官房こども家庭庁設立準備室において実施した「こども政策決定過程におけるこどもの意見反映プロセスの在り方に関する調査研究」内でこどもや若者から意見を聴いている様子。この日は、小学生~20代の計48人の子供・若者が集まりました。

――ちゃんと活用してもらえるよう、作成段階で試行錯誤されていることがよく伝わりました。調査研究は2年間されたとのことですが具体的にどのようなテーマで調査研究されていたのでしょうか。

“1年目の令和4年度は、”こどもの意見を反映するとはどうあるべきか“を研究しました。有識者や諸外国にヒアリングをしたほか、実際にこども・若者に意見を聴くというモデル事業も実施し、こども・若者の意見を聴くこと、受け止めて、検討して、反映するというプロセスについてのスタンダードな大枠を作成しました。

「こども・若者の意見の政策反映に向けたガイドライン<概要版(取組ポイント)>」より。こども・若者の声の出所は令和4年度「こども政策決定過程におけるこどもの意見反映プロセスの在り方に関する調査研究報告書」。

その中で、大人が無意識的に、”意見を言えないのではないか、意見を持っていないのではないか“と意見を聴く対象から排除しているこども・若者や、聴く側が工夫や配慮をしないと聴けないこども・若者がいることも浮かび上がってきました。

そこで2年目の令和5年度は、声の聴かれにくいこども・若者がいること、属性に共通する大切なことや気を付けるべきことを調査研究の対象にしました。”

――ガイドラインの第3章に「声を聴かれにくいこども・若者の意見反映」という章がありますね。聴く側の大人の態度も大事であることがよくわかりました。

「こども・若者の意見の政策反映に向けたガイドライン<概要版(取組ポイント)>」より

――しかし、声を聴いて終わりではなく、反映することが重要ですよね。この点について、難しいという声も多いのではないかと想像しますが、どのように反映させたらいいのでしょうか?

“反映の仕方も様々です。いただいた意見の一つ一つを反映させることが難しい場合も多々あるかと思いますが、そういったときにこそ、その意見の真意を捉えてそれに応える方法を考えることも大切です。その子が求めているものはなにかを考えるとともに、こどもたちにとって一番いいことは何かを考えること。予算の制約等の理由により受け入れられなかったとしても、検討の経緯をしっかりと伝えること。これらが重要です。

例えば、こどもたちから意見を聴くことを通して「大人の意識が変わった」や「新しい価値観に気付くことができた」といったことも、こどもの意見が社会に影響を与えた結果ですので、反映のプロセスの一つですし、こどもたちにフィードバックできることだと考えています。”

――こどもたちにフィードバックすることも大切なのですね。

意見交換をしている様子。各々が意見を出し合い、出た意見を模造紙にまとめていきます。

――最後に、この記事をお読みいただいている皆様に、メッセージがあればお願いいたします。

“こども・若者の声を聴く方法は様々あります。本ガイドラインでもたくさん紹介していますが、あくまで一例です。このガイドラインをヒントとしていただき、各自治体等で取組を進めながら、より良い方法を探していただきたいですし、そのプロセスにおいてもこども・若者の声を聴いてもらえたらと思います。

そのためにも、大人の考え方の転換が重要です。

ガイドラインの第1章には意見反映の意義と背景についても記載をしています。こども政策担当部局だけでなく、ぜひ、政策立案に携わるすべての方に御覧いただけたら幸いです。

また、こども家庭庁では、国の施策について意見を聴き、反映する取組である「こども若者★いけんぷらす」を実施しています。小学1年生から29歳であればどなたでも登録いただける取組です。詳細はこども家庭庁ホームページにも載せていますので、ぜひ、こちらの取組事例についても参考にしていただくとともに、この取組を広げていただければ幸いです。”

===

こども・若者を対象とする施策について、こども・若者の意見を聴くことの意義が組織全体で理解されることは、とても重要であることがわかります。周知し、理解を促すためにも本ガイドラインを御活用いただければ、とのことでした。
こども家庭庁の皆様、お忙しいところインタビューに御対応いただきありがとうございました。
情報が盛りだくさんのこのガイドライン。ぜひお時間あるときに御一読いただき、自治体等での取組の際には、御活用いただければと思います。

▽かわいいイラストの入ったポイント資料もあります。まずはこちらから。

こども・若者の意見の政策反映に向けたガイドライン<概要版(取組ポイント)>(PDF)

▽資料集では、参考となる自治体の事例が多く掲載されています。

こども・若者の意見の政策反映に向けたガイドライン<資料集> (PDF)

……………………………………………
関連情報

……………………………………………
読者アンケート: 「ミラメク」で取り上げてほしいテーマ(施策解説、話を聞きたい人物、魅力的な地域のプロジェクト)等、御意見・御要望をお寄せください。