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【JAXA法改正】宇宙開発を民間企業や大学とともに|総力戦で挑む宇宙開発

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▶2024年3月、宇宙戦略基金を設置。
▶法改正によってJAXAが民間企業や大学の宇宙開発支援をできるように。
▶リスクを伴う研究開発や事業にも、国が資金面で支援できる仕組みが成立。
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人類の活動領域の拡大や宇宙空間からの地球の諸課題の解決が本格的に進展し、経済・社会の変革(スペース・トランスフォメーション)がもたらされつつあります。宇宙と聞くと、遠い世界の話のように感じられるかもしれません。しかし、私たちの生活はすでに多くの宇宙技術に支えられています。例えば、天気予報には気象衛星の観測データが用いられていたり、スマートフォンの地図アプリでは測位衛星の位置情報によって道案内がされたりしています。宇宙は遠い“夢”ではなく、すでに身近な“現実”です。

宇宙が私たちの身近なものになった今、多くの国が宇宙開発を強力に推進するなど、国際的な宇宙開発競争が激化しています。変化をもたらす技術進歩が急速に進展しており、我が国の技術力の革新と底上げが急務となっています。

このような背景を受け、文部科学省では、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法(JAXA法)を改正し、2024年2月26日に施行しました。そこで、JAXA法改正によって宇宙開発がどう変わるのかをご紹介します。

「きぼう」から放出される超小型衛星「BEAK」(東京大学)(CubeSatタイプ)の様子 画像提供:JAXA/NASA

JAXAって何?

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2003年に宇宙科学研究所(ISAS)、航空宇宙技術研究所(NAL)、宇宙開発事業団(NASDA)の3機関が統合して誕生しました。政府全体の宇宙開発利用を技術で支える中核的実施機関と位置付けられ、宇宙航空分野の基礎研究から開発・利用に至るまで一貫して行っています。記憶に新しいところでは、2024年1月20日、月への着陸に成功した『SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)』や、2月17日に打上げに成功した『H3ロケット』もJAXAによるプロジェクトです。

H3試験機2号機打上げ ©JAXA

JAXA法の改正を通じて民間企業や大学等の研究開発を支える

JAXAの目的・業務の範囲等について定めているのがJAXA法です。これまでのJAXA法では、JAXA自身が行うロケットや人工衛星、国際宇宙ステーション、航空機などの研究開発業務やその成果の普及・活用の促進に関する業務等が規定されていました。

これに加えて、今回の法改正で、JAXAの目的・業務に「宇宙空間を利用した事業の実施を目的として民間事業者等が行う先端的な研究開発に対する助成」が追加されました。これにより、JAXAがこれまで培ってきた宇宙航空関連の知見をいかし、JAXAから民間企業・大学等が行う研究開発への助成が可能となります。

つまり、JAXAは自らの研究開発に加えて、宇宙関連事業の実現を目指す民間企業等が実施する研究開発を資金供給により支えることができます。この資金供給機能を強化するために、JAXA法の改正に合わせて、2024年度補正予算により、文部科学省と内閣府・経済産業省・総務省が協力し、JAXAに『宇宙戦略基金』を創設しました。

宇宙戦略基金のイメージ

宇宙戦略基金って何?

そもそも基金とはなんでしょうか。基金とは、特定の事業目的のために国が積み立てる資金です。宇宙分野の研究開発は、その特徴として、長期間を要し、宇宙特有の様々な技術課題や事業化リスクに直面しやすいなど、進捗予測が困難であり、不確実性が伴うといった特徴が存在します。こうした中で、我が国の民間企業や大学等が、革新的な研究開発や事業化に主体的に取り組むためには、複数年度にわたる財源の見通しを示すとともに、研究開発の進捗に応じて、柔軟かつ効率的な支援を可能とする仕組みが重要です。

そこで、宇宙分野の産学官の結節点であるJAXAに、最長10年間にわたって、民間企業や大学等への戦略的かつ弾力的な資金供給を可能とする「宇宙戦略基金」を設置しました。

この宇宙戦略基金では、「輸送」「衛星等」「探査等」の3つの分野を対象に、宇宙における
・関連市場の拡大
・地球規模課題、社会課題の解決への貢献
・知の探究活動の深化及び基盤技術力の強化
を目標として研究開発への支援を実施します。

JAXA調布航空宇宙センターにおける月極域探査機 LUPEX(Lunar Polar Exploration)ローバの走行系試験(1輪登坂試験)の様子(撮影2023年2月)©️JAXA

これからの日本の宇宙開発

今回の法改正により、日本の宇宙政策の5か年計画が定められた『宇宙基本計画(令和5年6月13日閣議決定)』で謳われている以下の取組が具体化されます。

宇宙基本計画(2023年6月13日閣議決定)抜粋
・JAXA の先端・基盤技術開発能力と、JAXA による大学や民間事業者の支援機能を強化し、JAXA、大学及び民間事業者が失敗を恐れずにチャレンジすることで、我が国の宇宙産業を支える技術的優位性を継続的に作り続ける。
・JAXA の戦略的かつ弾力的な資金供給機能を強化する。これにより、JAXA を、産学官・国内外における技術開発・実証、人材、技術情報等における結節点として活用し、産学官の日本の総力を結集することで、宇宙技術戦略に従って、商業化支援、フロンティア開拓、先端・基盤技術開発などの強化に取り組む。

宇宙基本計画(内閣府HP)

宇宙開発では大規模な資金が必要になる場合が多く、これまでは国が先導し、日本における主な宇宙開発はJAXAを起点に行われてきました。国際的な宇宙開発競争において、民間企業や大学等の存在感が増す中、我が国でも、これから宇宙開発の経験・知見をもつJAXAが中心となって基金を活用し、民間企業や大学等による研究開発を支援し、総力戦で挑むことになると考えます。こうした取組において、JAXAが産学官の技術開発等の一層の結節点として活躍することを期待しています。

民間企業等のみなさんによる宇宙関連事業への挑戦を、研究開発段階から、国が応援できることになりました。今後の宇宙開発の主体は、国から民間企業・大学等へと広がっていきます。宇宙開発に参画する大きなチャンスと捉えていただければと思います。

文部科学省では、今後も民間企業や大学等の皆さまと共に、宇宙技術によって地球上の様々な課題の解決に貢献し、より豊かな経済・社会活動の実現を目指していきます。

大学や研究機関、民間企業等が開発した部品や機器、超小型衛星、キューブサットに宇宙実証 の機会を提供する革新的衛星技術実証プログラムの小型実証衛星2号機(RAISE-2)フライトモデル ( 撮影2021年8月)©️JAXA

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「ミラメク」2024年春号 記事


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